読書メモ 安田峰俊の本を何冊か読んだ
Twitterでいつもアカウントを見ている安田峰俊さんの本を何冊か読んだのでメモ。
性と欲望の中国
文春新書。
現代中国における性にまつわる文化について扱った内容。
といっても右翼本のような下世話なものではなく、新書向けにライトな語り口であるが真面目な内容である。
Twitterでも紹介されたラブドール仙人、中国製のラブドール、それから性産業などが扱われている。
男性の多くが聞いたことのあるであろう中国語についてのコラムが面白い。
アニメやゲームについてもそうだが、いわゆるオタク産業というのは日本からすでに巣立っていったんだなあ、と感じる。
(萌え系のキャラクターデザインは、もはや中国産のほうが優れていると感じる)
和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人
安田峰俊という人をTwitterで知ったので、もう少し政治寄りだったりであるとか、都市部の文化についてが専門であるような印象を持っていたのだが、
本書の冒頭とラスト、中国の辺境も辺境における展開を読んで、バックパッカーの時代の残り香を感じる紀行文を書ける人だったのかと驚いた。
高野秀行とも共通する匂いを感じた。
しかし(自分は文庫版で読んだのだが)ハードカバーの原著が2012年の刊行なので、2020年時点の目から見ると文化へのさまざまな締め付けがまだゆるかった時代の描写が一昔前に感じる。
(そのことはあとがきでも触れられている)
移民・棄民・遺民
社会の周縁、そして文化と文化が干渉する領域の、どちらにも属することができない、どちらに立つことも、立とうとしても葛藤が生じる、そんな立場の人々について扱った本。
わたし自身、周縁の人間であると感じることが多いので、実感をもって読める内容であった。
周縁の人を支援しようとする人の傲慢さ、可哀想な人として扱うことへの不快感というのを、わたしも持っている。
本書には、そのような視線への拒絶を筆者自身が受けたことが描かれている。
支援者の傲慢な目、余計なお世話、そういったものへの不快感を表明することは、もしかするとリベラルな社会的立場から離れる危険があるのではないかと感じ、自分自身がそういう敵意を持つことを警戒してきたのだが、実際にそれが原因でモンスターになることを避けるのは当然としても、その不快感自体は感じて当然のものであるのだ、という認識を新たにした。