山本譲司 「獄窓記」

ふと、本棚にあった本書を手に取ったら、二時間ほどで一気に読んでしまった。

国会議員であった山本譲司の獄中記で、言わずと知れた本である。
賞を取り、ドラマ化もされた。

初めて読んだが、本書の影響で累犯障害者などの問題がそれなりに知られるようになった現在、先に予備知識を得ていたため、それを後追いするものになってしまった。
しかしこれがセンセーショナルであったことを想像するのは難しくない。

獄中を描いた作品ということで、「刑務所の中」と比較して読んでいた。
刑務所の中」は絵柄のためもあって、牧歌的にさえ見えるものだった。映画版もそうだ。
だが本書の刑務官の言葉遣いや、獄中で頻発するケンカもまたリアルなのだろう。作品とするときに着目する場所が異なっただけだ。

あたかも山本譲司の見たものを追体験したような心地になったが、それでもっとも心に残ったのは福祉という仕事への尊敬であった。
弱い者のほうが、近くで細やかに見える気がするのかもしれない。

獄窓記 (新潮文庫)

獄窓記 (新潮文庫)