子供の頃に好きだったヒーローから、大人になってからの嗜好が予想できるかもしれない

子供は格好良いものが好きだ。

ただ、好きになるヒーローは子供によって違う。

ある番組を好きな子供が、後番組にはそっぽをむくことは当たり前にある。

 

その理由には、ヒーローのデザインが大きく関わっていると思うのだ。

昨今の俗流文化論に乗っかって論じるとすれば、それは、

「都会的なもの」と「ヤンキー的なもの」だ。

 

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例として、私が子供のころのヒーローについて対比する。

 

ひとつはガンダムだ。

1993年に放送されたVガンダムと、1994年に放送されたGガンダム

 

MG 1/100 LM312V04 Vガンダム Ver.Ka (機動戦士Vガンダム)

MG 1/100 LM312V04 Vガンダム Ver.Ka (機動戦士Vガンダム)

 
HGFC 1/144 GF13-017NJ シャイニングガンダム (機動武闘伝Gガンダム)

HGFC 1/144 GF13-017NJ シャイニングガンダム (機動武闘伝Gガンダム)

 

 

 それぞれの主役のデザインを見ると、流麗で洗練されているが地味なVガンダムと、赤や黒のラインが強調され、ケレン味があるとも言えるが大雑把で派手なシャイニングガンダムは、系統の異なるデザインだと言うことができないだろうか。

Vガンダムは曲線的で、シャイニングガンダムは角ばっているともいえる。

 

私は(当時作品内容は理解できなかったが)Vガンダムの格好良さが好きだったが、玩具やプラモデルはあまり売れなかったといわれている。

一方、Gガンダムはそれなりにヒットして、その後もガンダムシリーズが続くきっかけとなった。

 

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同様に、男の子のヒーロー・戦隊についても考えてみる。

ファイブマン ファイブレッド 超合金
 
レジェンド戦隊ヒーローシリーズ06 ティラノレンジャー

レジェンド戦隊ヒーローシリーズ06 ティラノレンジャー

 

 

当時の記憶では、ファイブマンはなんとなく格好が悪く、見向きもしなかったように思える。玩具で遊んだ記憶もない。

いっぽうジェットマンジュウレンジャーは、好んで戦隊ごっこをしていたし、玩具も揃えてもらっていた。

その差を戦隊ヒーローの衣装から見出そうとすれば、理由はおそらく、デザインの必然性にあったのだと思う。

ファイブマンは、漠然としすぎている。

それに比べて、ジェットマンジュウレンジャーは、鳥や恐竜といったモチーフへの必然性がある。

 

とくに着目したいのは、ファイブマンの胸にある黄色のラインだ。

とくに必然性がなく引かれた太く黄色いラインは、それだけで衣装を大味なものにしてしまっているのだ(その他の色の衣装にも線は引かれている)。

ジェットマンも派手ではあるが、全体の統一感を損なわないうえで黄色が用いられているし、他の色の衣装では、それぞれに合った色が用いられている。

 

他に戦隊について言うと、弟が見ていたオーレンジャーというヒーローが受け入れがたかった。

「超力戦隊オーレンジャー」ヒット曲集

「超力戦隊オーレンジャー」ヒット曲集

 

 さすがにこの顔は、小学生からしても有り得ないものとか思えなかった。

戦隊ヒーローのデザインは、時に安易になってしまい、子供からそっぽを向かれてしまうように思える。

 

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先に例に挙げたGガンダムでは、主役のデザインに歌舞伎がモチーフとして用いられているという。

歌舞伎は今でこそ伝統文化と言われているが、方向性としては、日本人の好むいわゆるヤンキー的なもの、そのものだ。

 

大多数の子供は、ヤンキー的な大雑把に格好の良いヒーローを好み、熱中するのだろう。

だが、そういうデザインを好めない、悪く言うと地味なものを好む子供は、幼少時からどこか満たされないものを抱えて生きていってしまうのではないか。

 

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Vガンダム桂離宮だとしたら、Gガンダム東照宮かもしれない。

おそらく、分かりやすく、多くの人が楽しむことができるのはGガンダムなのだろう。

今更モダニズム被れのようなことを言うのは恥ずかしいかもしれない。それでも、感情的デザインを好ましいと思えない。

 

現在放送されている二つのガンダムの主役は、以下のようなものだ。

 

 上は子供向けのゴールデン帯番組、下はオタク向けの深夜番組として放送されているガンダムだ。

デザインとしてはどちらもとげとげしいが、色調は下が明らかに落ち着いている。

まるで、子供には赤や青の激しいカラーリングでアピールしておけばよいと言わんばかりだ。

 

子供が遊ぶ玩具のデザイン一つをとっても、ジャンクフード的なデザインにばかり触れていると、大人になってからろくでもないプロダクトデザインの商品ばかりを手にしてしまうように思える。

日本の文化風土に根付いた嗜好だから払拭することはできないかもしれない。それでも、安易なデザインに子供が触れ続けることを、私は好ましく思えないのだ。