「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」
先日のことだが、映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」を見る機会があった。
1950年代のパリを舞台にした映画。
簡単に言えば、パリの裏町に育った少年が、ムスリムのおじさんと出会い導かれていくという話だろうか。
あらすじを記しても仕方ないので感想だけ書くが、世界の見え方は、いかようにでも美しくなるのだと思ったことがまず一つ。
作品の前半、ローティーンの少年と、町に立つ娼婦との交流がいくつか描かれる。
以前鑑賞したゴダールの「女と男のいる舗道」と時代も場所も似通った設定だが、本作ではそういう裏町が一種魅力的にさえ見えてしまったのだった。
(もちろん、リアルタイムの描写と、過去について客観視したうえでの描写という点で大きく違うが)
実際、美しいはずがない風景だろうし、主人公は世界をろくでもないものだと感じていただろう。そして実際、ろくでもない出来事ばかりがやってくる。
しかし、一瞬一瞬の切り取り方は、そうそう悪いものだとは感じられなかったのだ。
ポジティブな切り取り方が一種気持ちの良い映画かもしれない。
人生は捨てたものではない、という陳腐かもしれないが前向きになれる感想をもらえた一本だった。