北朝鮮のアイドル『モランボン楽団』が80年代すぎる件について
北朝鮮にもアイドルがいる。
その名も『モランボン楽団』である。
北朝鮮の音楽というと、まるで軍歌のような時代錯誤なものしかないと思われている。
しかし、時代に合わせてどんどん変化していっているのだ。
じつはそのなかにもアイドルグループが存在している。
モランボン楽団。
金正恩そのひとの肝入りで結成したという、北朝鮮のスーパーアイドルである。
モランボン楽団
北朝鮮のアイドル『モランボン楽団』とは、いったいどのようなグループなのだろう。
そして、その魅力はどんなところにあるのだろうか。
まるで80年代アイドルのような名曲
百聞は一見にしかず。
まずは上記の動画を見てみてほしい。
曲名は「走っていこう未来へ」(原題:모란봉악단 달려가자 미래로)
聞けばわかるとおり、生バンドによる壮大な前奏から、60年代アメリカのコーラスグループもかくやといった完璧なハモリ、キレキレでぴたりと揃った振り付けと、もう、完璧にアイドルグループである。
それもそのはず、彼女らは、北朝鮮中から集められたエリート音楽家からさらに、容姿に優れた女性だけを選りすぐったという、北朝鮮芸能界のエリート中のエリートなのだ。
ただでさえハイレベルすぎる歌唱力や演奏力。
もちろんその背景には、社会主義独裁国家ゆえの、強制かつ厳しい訓練があることはかたくない。
おそらく非人間的なことも平気でさせられていることだろう。
しかし、できあがったものはまさに、北朝鮮の本気だというほかない。
歌、演奏、すべてがハイレベル
じつはこのモランボン楽団のメンバーは数十人存在しているという。
だが違うのは、楽器の演奏までメンバーが担当しているということ。
バイオリンやピアノはもちろんのこと、エレキギター、ベース、ドラムといった、北朝鮮という国からはイメージしずらい楽器まで、その超絶技巧を目にすることができる。
映像を見ていると日本のYAMAHAやKORG、Ibanezといった楽器メーカーの製品が平気で使用されていることもわかる。
なぜモランボン楽団が日本人の琴線に触れるのか
このモランボン楽団、日本人にとっては謎の親しみが湧く音楽を奏でている。
時代錯誤ゆえの魅力
北朝鮮の音楽というと、少し前に動画サイトで『攻撃戦だ』(原題:공격전이다)という曲が話題になったことがある。
その理由は、まるで70年代のロボットアニメのテーマソングのような曲だったため。
北朝鮮の作曲家がオリジナルの表現を行おうとした結果、日本のアニソンと似通ってしまったのか、もしくは最初から日本のロボットアニメを参照した可能性もある。
北朝鮮の話題で韓国の名前を出すのはよくないことかもしれないが、時代錯誤ゆえの日本人への親近感というと、一世を風靡したドラマ『冬のソナタ』は、日本人にとっては少し古臭いくらいの、時代がかった表現が理由でヒットしたともいわれている。
かつて、どこかで聞いたことがある、馴染みのあるメロディ。
懐かしみを覚えるような歌と演奏。
それこそ、この北朝鮮のアイドルグループが魅力的に見える理由なのだろう。
完璧にアイドル
そして、やっていることはアイドルそのものなのだ。
衣装からして完璧にアイドルだ。
北朝鮮らしく軍服を元にした衣装がトレードマークなのだが、ミニスカートの軍服というのは日本のアニメにも通じるところがある。
あまりにクサすぎるくらいの振り付けも、どこか往年の邦楽を彷彿とする。
日本のアイドルグループが素人っぽさを売りにするようになって久しい。
それゆえに、トレーニングに次ぐトレーニングの末に完成した、完璧なアイドル歌謡が、逆に新鮮に見えてしまうのだろう。
- アーティスト: ザ・フォーク・クルセダーズ,朴世永,サトウハチロー,松山猛,青木望,ありたあきら
- 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
- 発売日: 2002/03/21
- メディア: CD
- 購入: 4人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
もっと名曲を!
残念なのは、最初に挙げた『走っていこう未来へ』だけが、極度に完成度が高いということだ。
他の曲は基本的に北朝鮮の軍歌や愛国歌、伝統的な楽曲が多く、もちろんクオリティは高すぎるくらいのものなのだが、そこまでの高揚感は感じられない。
おすすめ動画(※削除されてしまいました)
モランボン楽団の動画のなかでも比較的新しく、しかもHDで撮影されているのがこちらの動画になる。
[HQ] Moranbong Band Concert, The 9th National Meeting of Artistes
おそらくモランボン楽団関係の動画のなかでももっとも高画質なものと思われるのでおすすめである。
『走っていこう未来へ』は最後から2番目で歌われている。
(ただし、カメラワークや振り付けは、最初に紹介した動画のほうがはるかによい)
おすすめ曲2「我らは万里馬騎手」
「走っていこう未来へ」ほどではないが、この曲「我らは万里馬騎手」もおすすめである。
イントロやメロディラインが、こちらもまた80年代っぽさ満載で、懐かしいような新鮮なような、耳への優しさがあってとてもよい。
イントロとサビのメロディが、アニメ「トップをねらえ!」のBGMっぽくも聞こえるところがある。
どこか懐かしい北朝鮮のアイドル
ここまで好意的にモランボン楽団を紹介してきたが、もちろんこのアイドルグループが成り立っているのは、北朝鮮の独裁政権があってこそのことである。
特権階級が作った特権階級のためのアイドルなのは間違いない。
そして彼女たちは、グループから卒業したあとには北朝鮮高官の妻になることが多いともいわれている。
それでも、偶然が生み出したこの音楽グループと、その楽曲には不思議な魅力を感じてしまうのだ。
もし将来日朝関係が改善したときには、国外でも公演してくれる日が来るのだろうか?