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北杜夫 「どくとるマンボウ青春記」

書籍 作品感想
どくとるマンボウ航海記などで知られる作家、北杜夫の青春時代を描いたエッセイ、自伝。

北杜夫の著作を読むのは初めてだ。
往年のベストセラー作家という認識だったが、読んでみると普遍的に面白い。
斎藤茂吉の息子という血筋は流石のものだと思った。

内容は著者の旧制高校・医学生時代で、著者にとって人生の区切りの出来事と、青春の終わりまでを綴っている。

敗戦と戦後を過ごした若者は、現在の若者と同じくらいくだらないこともあるかもしれないが、それでも時代背景が思考することを作ったのかもしれないとも感じた。

貧しい時代ではあったが、戦後の世代だけあって、絶望はそこまで見られなかった。
私が高校生か大学に入りたてのころ、中野孝次旧制高校時代について書いた本を読んだことがあったが、こちらは戦争と死の影が常につきまとっていたため、どうしても比較してしまうのだった。

この本含め北杜夫という作家の立ち位置がいまひとつわからず、もしかしたら単に「面白く」読むだけで良いのかもしれないが、心にしみた言葉があったので引用する。

「自殺するならとにかく三十歳までいきてみろ、ということだ。そこまで生きてからの思想上の死ならまだしも許せる」

「われわれは成長するにつれ各種の愛の段階を知ってゆき、かつてのそれは愛ではなかったと言いがちだが、どんな幼稚な愛にしろ、その個人の一つの時期にとっては、それぞれに本物の愛であったことに変りはない」

本当ならこれらは若者に向けてのものだろう。
もっと若くして悩んだ人間が、あらかじめ悩みを笑い飛ばすことができるようになれる一冊かもしれない。

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)