沢渡朔写真展 「少女アリス」 (ギャラリーFm)
ここ数日、出かけるついでに写真系のギャラリーに立ち寄っている。
今日も恵比寿近辺のいくつかを回ってきた。
主目的はギャラリーFm(エフマイナー)の沢渡朔写真展 「少女アリス」である。
今日が最終日だった。
8歳の少女を不思議の国のアリスをテーマに描く。
言わずと知れた代表作からの展示だが、「なんだかすごい」という感を受けたが、それ以上の強い印象を表現することはうまくできなかった。
沢渡朔という名前に、なんとなくアンタッチャブルでいかがわしいイメージを結びつけてしまったことが原因かもしれない。
危うさをはらんだテーマについて、触れないようにしてしまうのだ。
本展では当然ながらヌードも出展された(中学生以下は親同伴でなければ入場できないとの但し書きもあった)。
当然、そこにいかがわしさがあるとすれば後天的なものである。しかし少しでも危うさで上書きされると、ついつい怖がってしまうのだ。
それと単に私が、こういう抒情的なものをわかっていないのかもしれないが。
* * *
もうひとつ。
会場のギャラリーFmは今年8月にオープンしたばかりの新しいギャラリーだが、僅かなほころびもない空間にも怖さを感じた。
建物は「古民家を利用した」とだけ言えばブームに乗っただけのように見えるが、恵比寿という土地柄、隅々まで思考が行き渡っている。
悪く言えば隙がない空間だ。
ホワイトキューブを志そうとしているギャラリーでも、多少は空間に脇の甘さが見つかったりするものだが、ここにはそれが存在しない。
相当に金もかかっているだろう。
しかし、そういう空間だからこそ、沢渡朔の少女アリスを、微妙なバランスの上で完全にアートとして展示することができたのだろう。
アートといかがわしいものの境界線に近い作品群は、空間によって完全にアートとされるのだと思う。