サン=テグジュペリ 「夜間飛行」
サン=テグジュペリの作品を読んだことがなかった。
「星の王子さま」も読んだことはない。
いま、新潮文庫で「夜間飛行」(南方郵便機を併録)を読もうとしたのだが、半分も読まないうちに辛くなり断念した。
それは、この小説が過酷だからである。
確かにリアリズムなのだろう。
だが、働くという描写、任務があるという描写、理不尽な圧迫により生を得る描写を、わざわざ余暇に読む小説でまで感じたくない。
現実の過酷さ、辛さ。裸の描写をわざわざ読むことはできなかった。
あとがきだけは先に読んだが、基本的に過酷さは変わらないようだ。
本作に描かれている人生観を受け入れて読むことができるほど、私の精神が強くないのかもしれない。
ただ興味深かったのは、堀口大學という名前だけは知っていた文学者の訳文が、想像以上に現代的だったということである。