国立近代美術館 「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」
今日は竹橋の国立近代美術館に行ってきた。
実は企画展は全くノーマークで、適当に400円ちょっとで常設を見て癒されようという意図だったのだが、むしろ企画のあまりの濃厚さに、へとへとになるまで美術館で過ごしてしまったのだった。
ヤゲオ財団コレクション。
台湾の電子機器メーカーCEOによる同コレクションは、まさに現代美術、同時代美術を概観するものにほかならなかった。
誰でも知っている名前ならばウォーホル、ホックニー、ベーコン。グルスキーや杉本。リヒター。シュトゥルート。
自分がこの企画展を見ようと思ったのは、とくに、トーマス・シュトゥルートの名前があったからに他ならない。
実際、シュトゥルートには一室が割かれていて、昨年の新美グルスキー展以来のドイツ写真空間に浸ることができたと思う。
The Dusseldorf School of Photography
- 作者: Armin Zweite,Stefan Gronert,Lothar Schirmer
- 出版社/メーカー: Thames & Hudson Ltd
- 発売日: 2009/11/02
- メディア: ハードカバー
- 購入: 1人 クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
* * *
大御所作家のなかにあって興味を持ったのは中国・台湾の画家たちだった。
常玉(サンユウ)には単純によさを感じた。
だがそれより更に、陳澄波(チェン・チェンボー)や、郭柏川(グォ・ボーチュアン)といった東京美術学校に学んだ画家のほうに好奇心を刺激されたのだ。
彼らの作品は一見して「美校っぽい」。
日本人ならば、同様の作品を描いた画家は多くいただろう。
だが、台湾人だった彼らには物語が存在した。そのことが作品の行く末を変えたのだ。
例えば作品の取引価格だけを見れば、国内の洋画でも同程度の値を付けることはできるだろう。だが、彼ら台湾作家の作品は、国際的なマーケットで認められている。
その二つを分かつのは、ただただ、物語、バックグラウンドなのだ。つまり、歴史的価値ということなのだろうが・・・。
私がこうして興味を抱いたということ自体、歴史的価値という名の需要が存在していることの証左なのだ。
(とりあえず中国美術の本を読もうと思った)
* * *
この展覧会、内容はとてもよかった。
展示空間としても、過去最高だったといってもよい。
作品については言うまでもない。
唯一、勿体無いというかどうかと思ったのは、チラシやポスターなのだった。
静謐な展示空間や作品群に対して、宣伝ビジュアルがあまりに派手すぎる。
まるで東京都現代美術館のチラシを見間違うくらいだ。
実は自分もビジュアルだけ見て、今日は企画展をスルーするつもりで訪れていた。
だが、チラシの内側を開いて展示作品の濃密さを知り、急遽こちらを見ることにしたのだった。
正直、このチラシだと元々興味をもってくれそうな美術ファンを取りこぼしてしまうと思った。
それだけが、もったいなかった。
あと展覧会名、ラノベみたいで長すぎ・・・?