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須賀敦子がわずかに読めるようになってきた(コルシア書店の仲間たち)

数年ぶりに思い立って、須賀敦子の「コルシア書店の仲間たち」を読んだ。 この本を初めて薦められたのは大学生のときで、いまは新聞記者になっている文学部の友人から、ぜひ読むべきだと推薦されたのだった。 だが、そのときは文字を追うことだけがせいいっ…

スティーブ・ジョブズ(上)

スティーブ・ジョブズが死んでこの本が出て、もう5年も経つのだということが、まず驚きだった。 いままでテルマエロマエの作者の漫画版をちょっとしか読んだことがなかったのだが、いまさら上巻だけ読んでみた。 歯車の噛み合わせが致命的に良くて、世界を変…

別冊宝島「いまどきの神サマ」なぜ80年代、新興宗教だったのか

古本屋で、別冊宝島の「いまどきの神サマ」というのを買って読んだ。 1990年に出たこのムックは、1980年代のオカルトや新興宗教、精神世界を振り返り、同時代について記録した一冊である。 冒頭に取り上げられているのは、かのオウム真理教。しかも好意的に…

山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」

ファスト風土の文脈で引き合いに出される、はてな住民が大好きな小説の1つ。地元の個人経営の古本屋で100円になっていたので買ったのだった。ようするに、田舎のローカルな価値観で育ち、東京へ帰属意識を持ちたくとも、持ちきることのできない女性たち(セ…

三浦綾子 「道ありき」

薦められて手に取り、一気に読んだ。 <青春編>とあるとおり、著者の30代後半に至る、長い若い日を書いた一冊だった。 本書もまた、クリスチャンの著者の、信仰に至り、またその只中での思い描いたことなのだが、どうしてか、まず引き込まれたのは、冒頭の…

小野美由紀 「傷口から人生」

「マオ・レゾルビーダ」ブラジルで、「未解決の人間」という意味。サンティアゴ・デ・コンポステーラへの旅路で、著者が教えてもらった言葉である。自分の家族、人生の悩みを解決していない人間を指すという。本書の全体を、この言葉が表していると思った。…

小島剛一 「トルコのもう一つの顔」

昨日、クルド人の祭のネブロスに行ってきて、自分がこの地域について何も知らないことを痛感した。 そこで、以前から読みたかった本である、トルコの少数民族について書かれた「トルコのもう一つの顔」を早速読んだのだった。 著者の小島剛一は言語学者で、…

堀田善衞 「情熱の行方 スペインに在りて」

堀田善衞という名前は以前から知っていたが、その著作を読んだのは最近になってからで、その本は「インドで考えたこと」だった。 「インド~」ではアジアの中にある異質な存在である日本、極東の辺境である日本に気付くことができたが、同じ作者の著作で次に…

遠藤周作 「イエスの生涯」

キリスト教に触れるようになって、遠藤周作の著作をよく読むようになった。好きな作家の名前を問われたら、いまならば遠藤周作と村上春樹の二人を挙げることになるだろう、そのくらいに読んで味わっていると思える。文体もおそらくは、自分に合っているのだ…

山本譲司 「獄窓記」

ふと、本棚にあった本書を手に取ったら、二時間ほどで一気に読んでしまった。国会議員であった山本譲司の獄中記で、言わずと知れた本である。賞を取り、ドラマ化もされた。初めて読んだが、本書の影響で累犯障害者などの問題がそれなりに知られるようになっ…

ハウス加賀谷 「統合失調症がやってきた」

ボキャブラ天国で一世を風靡した、ハウス加賀谷の自伝である。お笑いにはあまり興味がなく、10台の頃に笑う犬も見ていなかったし、細かすぎて伝わらないモノマネをネットで知ったのもかなり遅い自分でも、当時彼が残した強烈な印象は覚えている。負の思考と…

小林紀晴 「写真学生」

少し前まで写真学生だった。結局いまはほとんど写真を撮らなくなってしまったのだが、写真が生活の中心だった時期が確かにあった。いまどきシャッター速度と絞りとピントを手作業で合わせ、暗室の赤いセーフライトの下で印画紙に焼き付けていた。ただ、その…

矢野健太郎 「数学物語」

中学生の頃まで、理系の道に進みたいと思っていた。具体的には工学部に進みたいと思っていて、自分は将来、技術者になるのだと考えていた。しかし高校に入った途端数学でつまづき、方針を変えて文学部に入ったのだった。だから自分は数学は高校の途中までし…

「冷静と情熱のあいだ」を読んだ

もしかすると、もっと早く、大学にいたころくらいに読むべき小説だったかもしれない、自分はこの恋愛小説を読むには年を取ってしまったのかもしれないが、辻仁成と江國香織の「冷静と情熱のあいだ」を読み終えた。大まかな筋は見聞きしていたのだが、実際に…

北杜夫 「どくとるマンボウ青春記」

どくとるマンボウ航海記などで知られる作家、北杜夫の青春時代を描いたエッセイ、自伝。北杜夫の著作を読むのは初めてだ。往年のベストセラー作家という認識だったが、読んでみると普遍的に面白い。斎藤茂吉の息子という血筋は流石のものだと思った。内容は…

遠藤周作 「侍」

沈黙、深い河を以前読んだが、三冊目に読む遠藤周作の小説である。 沈黙に続く長編、旅の物語である。 筋は、徳川幕府初期、キリシタン禁制が完全なものとなる直前に、メキシコ、イスパニアを経てローマへ渡り、そして帰ってきた日本人と、スペイン人宣教師…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹の、色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年を読んだ。 きっかけは、私自身が鉄道の音を聞くとなぜか落ち着くという、あまり認めたくないものを持っていることに気づいたことだった。 それで、刊行時の評によれば主人公が鉄道マニアという本作を…

熊崎武良温という早稲田の哲学者

大学図書館で廃棄本を漁っていたら、その内の一冊に葉書が挟まっていた。 消印は昭和29年で、どうやら大学教員に卒論の指導をお願いしたものだったようだ。 宛名は熊崎武良温。 検索したところ哲学者であり、図書館を検索すると、蔵書の内に遺稿集があった。…

遠藤周作 『私にとって神とは』

遠藤周作のエッセイ、というよりもキリスト教解説の本。 カトリックであることが前面にある氏ならではの一冊だが、日本人にとってのキリスト教入門書として、読みやすさ、切り口ともに最高のものの一つだろう。 下手に通俗的ではなく、かといって儀礼的で白…

サン=テグジュペリ 「夜間飛行」

サン=テグジュペリの作品を読んだことがなかった。 「星の王子さま」も読んだことはない。 いま、新潮文庫で「夜間飛行」(南方郵便機を併録)を読もうとしたのだが、半分も読まないうちに辛くなり断念した。 それは、この小説が過酷だからである。 確かにリ…

堀田善衛 『インドで考えたこと』 ――日本人の50年

『インドで考えたこと』のハイライトは、やはり、ペルシャ語を文化を源流に持つ国の人々が、口々に詩を詠むシーンだろう。文学者たちが詩を詠み競うのだが、同じ「アジア人」であるはずの著者は輪に入ることができないのだ。 堀田善衛 『インドで考えたこと…

島田清次郎 『地上 地に潜むもの』 感想

風野春樹 『島田清次郎』の刊行がきっかけで、杉森久英 『天才と狂人の間』を読んでから二週間。 これを機に、島清の代表作である『地上 第一部 地に潜むもの』を読むことにした。 若くして精神病院で夭折した彼の作品は、既にパブリックドメインになってい…

杉森久英 「天才と狂人の間 島田清次郎の生涯」再読

杉森久英「天才と狂人の間 島田清次郎の生涯」。 天才と狂人の間―島田清次郎の生涯 (河出文庫) 作者: 杉森久英 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1994/02 メディア: 文庫 購入: 1人 この商品を含むブログ (6件) を見る 本作は1962年の直木賞を受賞した…

戸田ツトム 『陰影論』を読んだ(否定的に。)

2012年、青土社刊の一冊。 デザイン論というかエッセイなのだが……。 内容は一貫しているし、文章としてもよいが、自分には極端に合わなかった。 劣等感からの感想かもしれないが、「できすぎる人」の言葉にしか聞こえないのだ。 この世代の人全般に、最近私…

西村賢太 『寒灯・腐泥の果実』

二ヶ月ほど前に「苦役列車」の映画版を見たことがあった。 劇中で描かれたものと近い労働が身近にあったので、憂鬱になりつつ共感もしていた。 ロジスティクスという文字は、いまでも深いトラウマである。 苦役列車への共感は、生きていくための金銭を得られ…

美術出版社の「仏像ガイド」(1959年)

古書の整理をしていて、一度は処分しようとした山の中から、一冊の本を救出した。 「仏像ガイド」。 美術出版社編、刊行。昭和34年初版。 処分するのをやめたのは、あらかたの仏像一体一体について概略と写真が併記されていて、50年前の本とはいえ、仏像鑑賞…