作品感想

園子温の映画「愛のむきだし」で使われている日立デジカメ

園子温の映画、愛のむきだし。 愛のむきだし 発売日: 2015/09/28 メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る 主人公が行う「盗撮」が物語で大きな役割を果たすわけだが、彼が使っているデジカメは、カメラファンには(一部で)知られているいわくつ…

園子温の映画「愛のむきだし」で用いられたキリスト教関連のあれこれ

いまさらですが、園子温の映画、「愛のむきだし」(2009年)を見ました。 愛のむきだし 発売日: 2015/09/28 メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る カトリックの家庭に育った主人公、キリスト教系新興宗教が物語内で大きな影響を及ぼすなど、全…

阿部共美 『ちーちゃんはちょっと足りない』 【発達障害・知的障害漫画】

阿部共美の『ちーちゃんはちょっと足りない』は、貧しさとその原因、そして貧しく暮らしている人について、一見して暗いわけではないが、リアリティあふれる描写をしている漫画だった。 発達障害、知的障害をリアリティを持って知りたいひとには、ぜひおすす…

三浦綾子 「道ありき」

薦められて手に取り、一気に読んだ。 <青春編>とあるとおり、著者の30代後半に至る、長い若い日を書いた一冊だった。 本書もまた、クリスチャンの著者の、信仰に至り、またその只中での思い描いたことなのだが、どうしてか、まず引き込まれたのは、冒頭の…

小野美由紀 「傷口から人生」

「マオ・レゾルビーダ」ブラジルで、「未解決の人間」という意味。サンティアゴ・デ・コンポステーラへの旅路で、著者が教えてもらった言葉である。自分の家族、人生の悩みを解決していない人間を指すという。本書の全体を、この言葉が表していると思った。…

AKIRA一気読み

うちの母は芸術家崩れだった。 70~80年代に青春を過ごしたその人は、まさに大友克洋の洗礼を受けた世代だった。 その子供である自分は、幼少の頃から、「AKIRAはすごい」「AKIRAには感銘を受けた」と言われて育った。 (もしかすると、それは映画版のことだ…

堀田善衞 「情熱の行方 スペインに在りて」

堀田善衞という名前は以前から知っていたが、その著作を読んだのは最近になってからで、その本は「インドで考えたこと」だった。 「インド~」ではアジアの中にある異質な存在である日本、極東の辺境である日本に気付くことができたが、同じ作者の著作で次に…

遠藤周作 「イエスの生涯」

キリスト教に触れるようになって、遠藤周作の著作をよく読むようになった。好きな作家の名前を問われたら、いまならば遠藤周作と村上春樹の二人を挙げることになるだろう、そのくらいに読んで味わっていると思える。文体もおそらくは、自分に合っているのだ…

山本譲司 「獄窓記」

ふと、本棚にあった本書を手に取ったら、二時間ほどで一気に読んでしまった。国会議員であった山本譲司の獄中記で、言わずと知れた本である。賞を取り、ドラマ化もされた。初めて読んだが、本書の影響で累犯障害者などの問題がそれなりに知られるようになっ…

ハウス加賀谷 「統合失調症がやってきた」

ボキャブラ天国で一世を風靡した、ハウス加賀谷の自伝である。お笑いにはあまり興味がなく、10台の頃に笑う犬も見ていなかったし、細かすぎて伝わらないモノマネをネットで知ったのもかなり遅い自分でも、当時彼が残した強烈な印象は覚えている。負の思考と…

小林紀晴 「写真学生」

少し前まで写真学生だった。結局いまはほとんど写真を撮らなくなってしまったのだが、写真が生活の中心だった時期が確かにあった。いまどきシャッター速度と絞りとピントを手作業で合わせ、暗室の赤いセーフライトの下で印画紙に焼き付けていた。ただ、その…

矢野健太郎 「数学物語」

中学生の頃まで、理系の道に進みたいと思っていた。具体的には工学部に進みたいと思っていて、自分は将来、技術者になるのだと考えていた。しかし高校に入った途端数学でつまづき、方針を変えて文学部に入ったのだった。だから自分は数学は高校の途中までし…

「冷静と情熱のあいだ」を読んだ

もしかすると、もっと早く、大学にいたころくらいに読むべき小説だったかもしれない、自分はこの恋愛小説を読むには年を取ってしまったのかもしれないが、辻仁成と江國香織の「冷静と情熱のあいだ」を読み終えた。大まかな筋は見聞きしていたのだが、実際に…

北杜夫 「どくとるマンボウ青春記」

どくとるマンボウ航海記などで知られる作家、北杜夫の青春時代を描いたエッセイ、自伝。北杜夫の著作を読むのは初めてだ。往年のベストセラー作家という認識だったが、読んでみると普遍的に面白い。斎藤茂吉の息子という血筋は流石のものだと思った。内容は…

映画 「ヨコハマ物語」

正月に知人とレンタルで「ヨコハマ物語」という映画を見た。2013年作品、主演は北乃きい。タイトルの通り横浜が舞台で、山下公園や元町、中華街といったいわゆる「横浜」が頻繁に登場する。サッカーの中澤も本人役で出演したり、横浜スタジアムも出てきたり…

植芝理一の漫画が好きだった

私は90年代のサブカルチャーをリアルタイムで体験していないのだが、うっすらと、マジンガーZやゲッターロボ、それに特撮ヒーローといった70年代文化の再評価が行われていたことを記憶している。 今思えばなぜ快傑ズバットのパロディをすることをセンスがよ…

岸田劉生のヤバさをもっと知るべき

いつだったか、日本人の画家で、マチエールというものを本当に理解しているのは、歴史上で高橋由一、岸田劉生、佐伯祐三の三人しかいない、ということを聞いたことがあった。その岸田劉生を今日久々に見て、そのヤバさにうーんとうなってしまったのである。…

遠藤周作 「侍」

沈黙、深い河を以前読んだが、三冊目に読む遠藤周作の小説である。 沈黙に続く長編、旅の物語である。 筋は、徳川幕府初期、キリシタン禁制が完全なものとなる直前に、メキシコ、イスパニアを経てローマへ渡り、そして帰ってきた日本人と、スペイン人宣教師…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹の、色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年を読んだ。 きっかけは、私自身が鉄道の音を聞くとなぜか落ち着くという、あまり認めたくないものを持っていることに気づいたことだった。 それで、刊行時の評によれば主人公が鉄道マニアという本作を…

ノルウェイの森という大学ファンタジー

村上春樹の代表作として、ノルウェイの森を挙げる人は多いだろう。 だが同時に、これが代表作であることを認めない人間も多い。 よく言われるのは、村上春樹作品でノルウェイの森を初めて読むと、村上春樹自体を嫌いになることが多いということだ。 また、村…

一番好きなアルバム The Zombies "Odessey and Oracle"

私が一番好きなアルバム、これからも一生聞きつづけるだろうと思うものの筆頭が、ゾンビーズの「オデッセイ アンド オラクル」だ。 澄み渡っている声とピアノの音色が、生きることの活力を与えてくれる。 そして、よいことがあったときも、悪いことがあった…

沢渡朔写真展 「少女アリス」 (ギャラリーFm)

ここ数日、出かけるついでに写真系のギャラリーに立ち寄っている。 今日も恵比寿近辺のいくつかを回ってきた。 主目的はギャラリーFm(エフマイナー)の沢渡朔写真展 「少女アリス」である。 今日が最終日だった。 http://galleryfm.com/alice/ 8歳の少女を…

「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」

先日のことだが、映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」を見る機会があった。 1950年代のパリを舞台にした映画。 簡単に言えば、パリの裏町に育った少年が、ムスリムのおじさんと出会い導かれていくという話だろうか。 あらすじを記しても仕方ないの…

遠藤周作 『私にとって神とは』

遠藤周作のエッセイ、というよりもキリスト教解説の本。 カトリックであることが前面にある氏ならではの一冊だが、日本人にとってのキリスト教入門書として、読みやすさ、切り口ともに最高のものの一つだろう。 下手に通俗的ではなく、かといって儀礼的で白…

サン=テグジュペリ 「夜間飛行」

サン=テグジュペリの作品を読んだことがなかった。 「星の王子さま」も読んだことはない。 いま、新潮文庫で「夜間飛行」(南方郵便機を併録)を読もうとしたのだが、半分も読まないうちに辛くなり断念した。 それは、この小説が過酷だからである。 確かにリ…

遠藤周作 『深い河』

完全に読書メモというか覚え書きの投稿ですが。 遠藤周作の『深い河』を読んだ。 他には以前『沈黙』を読んだだけで、そのときは単に歴史小説のように読んでいた気がする。 遠藤がカトリック作家というのは予備知識として知っていても、信仰とか神とか大きい…

涼宮ハルヒと「オカルト」の終わり

2006年にアニメになった「涼宮ハルヒの憂鬱」は、高校生~大学生の間で確かにブームになっていた。いつの間にか歴史上の作品になりつつあることが信じられないのだが、確かに時代を象徴する作品だったことに間違いはない。 その冒頭で、作品を象徴する台詞が…

堀田善衛 『インドで考えたこと』 ――日本人の50年

『インドで考えたこと』のハイライトは、やはり、ペルシャ語を文化を源流に持つ国の人々が、口々に詩を詠むシーンだろう。文学者たちが詩を詠み競うのだが、同じ「アジア人」であるはずの著者は輪に入ることができないのだ。 堀田善衛 『インドで考えたこと…

島田清次郎 『地上 地に潜むもの』 感想

風野春樹 『島田清次郎』の刊行がきっかけで、杉森久英 『天才と狂人の間』を読んでから二週間。 これを機に、島清の代表作である『地上 第一部 地に潜むもの』を読むことにした。 若くして精神病院で夭折した彼の作品は、既にパブリックドメインになってい…

杉森久英 「天才と狂人の間 島田清次郎の生涯」再読

杉森久英「天才と狂人の間 島田清次郎の生涯」。 天才と狂人の間―島田清次郎の生涯 (河出文庫) 作者: 杉森久英 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1994/02 メディア: 文庫 購入: 1人 この商品を含むブログ (6件) を見る 本作は1962年の直木賞を受賞した…